スリーマイル・アイランド、チェルノブイリ、フクシマ:原子力事故と放射線に関する伝統的メディアと新しいメディアの報道

Article Highlights

インターネットは、フクシマに関する大量の情報入手を可能とした。その量は、スリーマイル・アイランド事故やチェルノブイリ事故の際にメディアが提供したものよりもずっと多かった。フクシマに関するニュースの多くをジャーナリストが提供する一方、市民はブログやフェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどに精力的に参加した。見解をやりとりしたほか、他の人々を重要なニュースやビデオに導いた。インターネットは、また、伝統的なメディアに、よりよい報道の可能性をいろいろ提供した。記事のスペースを増やすとともに、インターアクティブなコンピューター・グラフィックスやビデオの使用を可能とした。例えば、ニューヨーク・タイムズの報道は、福島事故や放射能放出に関する大量の背景・解説情報を様々な形式で提供し、技術的情報についてよりよく理解する機会を読者に与えた。そのため、福島事故に関する放射線関連報道は、スリーマイル・アイランド事故やチェルノブイリ事故の場合よりも良くなっていた。ただし、テレビ報道の方は、まだ、問題が残った。

福島第一原子力発電所事故に関するメディアの報道・議論は、膨大なものとなっている。フクシマ事故が始まってから4ヶ月余りの時点で、グーグル検索の結果は、「フクシマ」で7370万件、「フクシマand 放射線」で2240万件だった。報道記事を追跡している「グーグル・ニュース」では、「フクシマ」に関して201000件、「フクシマ and 放射線」で2100件という結果だった1。原子力事故に関する報道は、東北地震・津波の影響に関する他のニュース記事を圧倒した。

1979年と1986年のスリーマイル・アイランド事故およびチェルノブイリ事故の後も、大量の印刷および電波媒体の報道があったが、フクシマの場合ほど、急速な伸びや最終的広がりを見せなかった。広範なフクシマ報道は、大きな原子力事故、その具体的結果、そして、広範な影響などについての情報を公衆がどのようにして得るかを変えてしまった――おそらくは、今後何年にも亘って――と言える。

インターネット、ウェブ・サイト、ソーシャル・メディアの存在が、フクシマ関連情報の多さの主たる理由である。これらが、マス・メディアの定義をいろいろな形で変えた。「我々は、インターネット時代に生きている。人々は、どのようなニュースを入手するかについて選択的になり得る。また、ニュースについてフィードバックできるのが当然と考える」と原子力エネルギー問題のブロガー、ダン、ヤーマンは述べている。そして、メイン・ストリームのメディアは、もはや、放送を支配していないと付け加えた(2011)。代わりに、この春、何百ものニュース・ソースが、ウェブ・サイトやブログでフクシマ情報を提供した。伝統的なメディア事業体、ウェブ出版、政府機関、原発推進/反対グループ、原子力問題に関する多数の専門家など、すべてが、進行中の事態についての議論に関わった2。科学者らは、原子力発電所や放射線について、広範なオンライン入門情報を提供した。そして、『ネイチャー』や『サイエンス』などの科学専門誌は、そのオンラインのニュース・ページに、記事を掲載した。

インターネットやソーシャル・メディアを活用する多くの民間の個人や団体が、彼ら自身の「ニュース」、伝統的メディアのニュースについての解釈、あるいは、彼らの見解を、ブログや、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどで提供した。何百ものツイッターの会話が、様々なハッシュ・タグ(例えば、#fukushima #nuclear #meltdownなど)の下で展開された。いろいろな事象や、読むべき記事、観るべきビデオのある場所などに関して、互いに情報を提供し合った。フクシマの事象の時系列について知りたければ、ウィキペディアをチェックすることもできた。そこには、放射線の計測値も含め、日を追った形で出来事がまとめられていた。

これらのインターネット活動のすべてと、伝統的な印刷媒体、テレビ・ラジオ放送が、フクシマの出来事や、それに関連した問題――例えば、様々な国における原子力政策など――に関しする情報を人々に提供する上で、大きな役割を果たした。オンラインの情報拡散の速さには、長所・短所があった。情報は迅速に現れたが、何かが流行ると、その正確さや、情報源の信頼性などについてあまり考えることなく、広範に拡散された。例えば、損傷した原子炉から「意味のある量の放射線[ママ]」が放出される可能性はないと主張する初期段階のブログ記事が何百ものウェブ・サイトや掲示板で再掲載され、一部の信頼できるメディアのサイトでリンク先として使われることさえあった(Elliot, 2011)

インターネットの到来は、大分前に、メディアの情報管理システムに穴を開けていたが、これが、フクシマ報道では非常に明確になった。事故発生当初の数日間、東京電力と日本政府が、記者会見を開き、非常にわずかの、いささか楽観的な情報を提供していた際、その報告は、科学者や、政府関係者、原子力産業あるいは反原発派、個人などによって、オンラインで直ちに、解釈・補足され、異議が唱えられた。事故の世界的な性格のために、情報管理の体制が弱体化されたという面もあった。日本だけでなく、米国、東南アジア、ヨーロッパ、ロシア、カナダ、その他の場所のジャーナリスト、団体、市民などが事故に関するニュースやコメントを提供し合ったからである。

三つの事故の類似点

スリーマイル・アイランド、チェルノブイリ、フクシマの事故に関する報道においては、その量や中央集中化という面で相違があったが、いくつかの重要な類似点もあった。その一つは、記者らが、これら三つの事故を、リアルタイムで、数日あるいは数週間に亘り、事故の進展に沿って報道したという点である。このことは、最初の数日間、速報に対する需要が、ほとんどコンスタントな情報更新を必要とし、正確さを保証する時間的余裕がほとんどなかったことを意味する。事故が進展するに従い、報道に正確さと詳細さが加わっていった。

もう一つの類似点は、これらの事故が、三つとも、複雑な技術的状況が関わるものであったため、多くのエンジニアや政府代表らにとって、状況説明の際に専門用語の使用を避けるのが難しかったということである。彼らは、ジャーナリストや素人が理解できる用語を使うのに苦労した。この状況をさらに複雑にしたのが、リポーターの多くが原子力発電所や放射線について技術的知識を欠いていたことである。事故について報道した者の中には、原子力について詳しいベテランの専門的リポーターもいたが、彼らは少数派に属した。

これらの事故はどの場合も、その進展の最中に、人々は、放射線について、どれだけの放射能が漏れているのか、健康に対する害があるのか、知りたがった。放射線についての報道は、様々な測定に使われる多くの用語、それに、米国で使われる専門用語と国際的用語の違いなどのために、本質的に複雑である。健康に対する潜在的な影響について注意深く表現するのも難しい。この難しさは、特に、放射線についての公衆が抱く恐怖から来る。これらの表現上の問題を克服し、放射線関連情報をリスクの文脈で語るために、ジャーナリストの中には、解説や比較を使ったものもいる。しかし、このやり方は、三つの事故すべてで同じだったわけではない。それは、発展を遂げ、時とともに改善された。三つ事故の報道――とりわけ、放射線に関するもの――を比較すると、メディアどのような変化が起きたのかについて、その一部が浮き彫りになる。

スリーマイル・アイランド事故の報道

インターネットのアクセスや携帯電話がなかったため、1979年の事故を報道していたジャーナリストらは、電話のアクセスを求めて殺到した。電話ボックスで並んだり、使用料を払って地元住民に電話を使ったりして、編集者やニュース・ディレクターに報告したのである。電話回線はしばしばパンクし、電話が通じないことがあった(Report of the Public’s Right to Information Task Force, 1979)3。事故発生後の最初の1週間、ペンシルバニア州ミドルタウンに300人から500人のジャーナリストが押し寄せた。主に米国内からだったが、日本やヨーロッパから来た者もいた。

事故について最初に報道したのは、多くの場合、単に手が空いているからというだけの記者だった。州都情報をカバーしていた政治記者や地元の記者などだった。原子力に関する初歩的な知識以上のものを持っている記者、原子炉がどのように機能するか、溶融とは何かなどを知っている記者はほとんどいなかった。彼らは、住民が健康に対するリスクについて考える際の助けにするために、放射能の放出についてどのような質問をすべきか、ということを知らなかった。原子力技術や放射線について知っている科学・医療記者らが何人か現地に到着したり、ホームベースから手助けをしたりした。多くの記者が現場にいたが、米国のメディアのほとんどは、通信社のAPUPI、ニューヨーク・タイムズや、シカゴ・トリビューン、ロサンジェルス・タイムズワシントン・ポストなどの配信組織、それにABCCBSNBCの三大ネットワークが提供したいささか中央集中的報道を利用した(Report of the Public’s Right to Information Task Force, 1979: 5, 171)

記事やテレビ放送の数は、フクシマの膨大な数に近づくことは決してなかったが、328日から43日までの5つの新聞とABCCBSNBCなどの報道の内容分析によると、公衆は、事故について、読んだり、観たりするものに事欠かなかった。この分析は、「公衆の情報を得る権利に関するタスク・フォース」が行ったものである。同タスク・フォースは、「スリーマイル・アイランド事故に関する大統領委員会」のために、コミュニケーション問題について調査したグループである。各ネットワークは、事故に関するニュースを、朝・夕のニュース、そして、特別プログラム、合わせて、約200分報じた。4大紙の記事の数は、45から85だった。ある地方紙は、148の記事を掲載した(Report of the Public’s Right to Information Task Force, 1979: 187-188)4

事故に関する報道は、事故の間原子力発電所で何が起きているのかに関して、そして、放射能放出に関して存在した電力会社、州政府、「原子力規制委員会(NRC)」の混乱を反映していた。それはまた、前述したエンジニア、政府関係者、ジャーナリストの間の「言語ギャップ」を反映していた。一人の記者は、ある記者会見場を出ながら、ハロルド・デントン――当時のNRCの原子炉規制部門責任者で、スリーマイル・アイランドにおけるジミー・カーター大統領の個人的代表――が、あんなに専門的で理解できないような言葉で溶融について発表しなければ良かったのにと考えたという。

スリーマイル・アイランドでの放射線関連報道は、問題があった。なぜなら、ほとんど常に不完全だったからである。責任の一端は、放射線情報を定期的に出さない政府関係者が負うべきものだった。しかし、記者の側も、正しい質問をするのに十分な知識を持ち合わせていなかった。内容分析の中で検討された243の放射線関連記事のうち、16だけが完全なものだった。タスク・フォースの厳格な基準によると、放射線関連記事は、完全なものであるためには、以下を含んでいなければならない。量、単位・率・時間、長さ、計測場所、放射性物質の性格とタイプ、被曝のタイプ。量と単位は、ほとんど常に記事に入っていたが、他のほとんどが入っていなかった。多くの報道機関が、読者や視聴者が放射線レベルの意味合いについて理解できるようにするために、X線との比較を用いたが、タスク・フォースは、これは誤解を呼ぶものだと見なした。全身被曝を考慮していないからである。バックグラウンド(自然)放射線と比較した方が適切だった(Report of the Public’s Right to Information Task Force, 1979: 11, 215-217)

タスク・フォースは、放射線関連報道は公衆の知る権利を満たしていないと結論づけ、この情報を提供しなかった情報提供者と、「不適切な比較、不十分な背景情報、事実として不可能なステートメントによって物事を混乱させた」記者らの両方の責任を問題にした。放射線関連報道は、タスク・フォースによると、「救いようのないほど不適切だった」(Report of the Public’s Right to Information Task Force, 1979: 217)

チェルノブイリ事故報道

チェルノブイリ事故について報道するのは大変だった。外国、しかも報道規制のある国でのことだったからである。当時のソ連の大統領ミハイル・ゴルバチョフは、1986426日に事故についての報告を受けたが、当初の報告は「非常に慎重なトーン」のものだったと述べている(2011)。彼が事故の程度について、そして、放射性物質が大気中に放出されたという事実について知ったのは、427日になってからのことだった。事故のついての詳しい内容をソ連が最初の公表したのは、56日――事故発生から10日後――のことだった(Amerisov, 1986)

事故発生後の最初の1週間、公式情報は少なく、記者らは、主として欧米の情報源をつかった。多くの記事は、被害者の数が多いとする憶測情報を流した。例えば、UPIの初期の記事は、2000人死亡とした。ある分析によると、米国政府の情報源は、ソ連による隠蔽について、あるいは、負傷・死亡数についての憶測をやめさせる働きはしなかったという(Dorman and Hirsch, 1986)。この分析は、また、米国の原子力産業が、この種の事故は米国では決して起こらないと市民を説得するに躍起になったと述べている。

ヨーロッパ各国の政府は、初期の放射線測定値のほとんどを提供したが、多くは表面的なものだった。米国のメディアが報じたように、放射線レベルは安全と述べただけで、安全が何を意味するか説明しないものもあった。計測レベルが以前のレベルの2分の13分の1に減ったとしながら、その時点あるいは以前の時点でのレベルは明らかにしないというものもあった。完全な形で計測値を明らかにしたのはわずかだった。

米国の5紙と三大テレビ・ネットワークによる事故発生後の最初の2週間の報道に関する内容分析によると、394本の記事の46%と、43件のテレビ報道の60%が何らかの放射線関連情報を含んでいた5。 しかし、放射線のレベルに関する情報は、まばらで、具体性を欠いていた。もっとも多い説明は、レベルが高い、中程度、低いとしながら測定数字を示さないものだった。次に多いのは、同じ、高・中・低のアプローチを取りながら、これに放射線レベルについての比較を加えるものだった。記事で測定数値の入っていたのは、52件、テレビ報道では4件だけだった。そして、これらは、タスク・フォースが入れるべきとした情報の約半分しか含んでいなかった(Friedman et al., 1987: 63, 77)

もっとも頻繁に使われた比較は、バックグラウンド(通常の)放射線レベルとのものだった。スリーマイル・アイランドの際に広範に使われた胸部X線と比べると重要な改善だった。しかし、テレビ報道では、胸部X線が4分の1のケースで使われた。新聞では、放射線関連情報を説明する取り組みは限定的であり、イラスト、画像、放射線関連用語集などはほとんど使われなかった。テレビ報道では、ほとんどのニュース番組でコンピューター・グラフィックスが使われたが、ほとんどが放射能を帯びた「雲」の広がりを示した地図や、原子炉の火災や溶融過程についての単純化したイラストなどだった。記事の80%以上、ニュース番組の93%以上が米国市民にとっての一般的リスク推定を含んでいた。ほとんどの場合、リスクはほとんど、あるいは、全くないとしていた。

内容分析は、チェルノブイリ事故の放射線関連報道が、スリーマイル・アイランドの場合より様々な面で良くなっていたことを示した。しかし、やはり、実際の放射線レベルについての報道や、読者や視聴者が自分たちのリスクについての理解を高めるための解説的情報は十分でなかった。放射線関連報道についての意見は、専門家の間で分かれている。「スリーマイル・アイランド公衆の情報を得る権利に関するタスク・フォース」の責任者を務めたデイビッド・ルービンは、「相変わらずの大混乱」だったと述べている。一方、「スリーマイル・アイランド事故に関する大統領委員会」の委員だった原子力工学の教授は、「チェルノブイリ報道は、以前より事実に基づいており、軽蔑的なところが少なかった」と述べている(Friedman, 1991: 80)。「米国原子力産業会議(AIF)」――現在の原子力エネルギー協会(NEI)の前身――は、米国の印刷媒体も電子媒体も、ほとんど例外なく、チェルノブイリについて、ほとんど行き過ぎのないかたちで、公平な報道を提供したと述べている(Friedman et al., 1992: 307)

フクシマ事故報道

フクシマは、インターネットの能力が原子力災害の報道を良くすることができるかどうかの重要なテスト・ケースとなった。米国の報道機関の多く――ウォール・ストリート・ジャーナル、ロサンジェルス・タイムズ、ワシントン・ポスト、クリスチャン・サイエンス・モニター、ナショナル・パブリック・ラジオなどを含む――がこの課題に取り組んだ。クリエイティブなアプローチを取り、長い記事や詳細な報道にスペースや放送時間を割くとともに、補完的なインフォグラフィックスやマルチメディア・プロジェクトの活用を試みた6。これらのメディアや他の報道各社は、事故事象に関する情報を扱っただけでなく、他のウェブおよびソーシャル・メディアとリンクを張り、更新情報を載せた。読者のコメントがオンラインで載せられ、ジャーナリストへのフィードバックを提供するとともに、対話を可能とした。そこには、意見、質問に対する答え、見るべき他のウェブ・サイトについての提案などがあった。

ニューヨーク・タイムズは、原子力災害についての効果的な語り方、とりわけ、複雑で、微妙なニュアンスの伴う放射線関連報道をマスターした報道機関の非常に良い例である。そのウェブ・サイトは、伝統的な放射線関連の叙述をクリエイティブで視覚的なノンリニア構造にした。複雑な、インターアクティブで、動画化した図が、変更を続ける避難地域、予測される放射能の雲の経路、使用済み燃料の貯蔵の危険性、「国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)」、労働者にとっての放射線の危険性、発電所にある放射能に汚染された水などについて説明するのに役立った。放射線の関連情報には、インターアクティブな図だけでなく、発電所内、発電所近辺、日本国内、世界各地での大気、土壌、水、食料などの汚染レベルについて論じた表もあった。別の放射線レベルのグラフは、312日から418日までの福島第一の事務本館、正門、敷地境界線での測定値を示していた。これらを、全身CTスキャン、米国におけるすべての線源および自然線原、それに胸部X線の被曝線量の累積的な典型的被曝線量と比較するものだった。これは、スリーマイル・アイランド・タスク・フォースが放射線レベルに関する正確な報道において必要だとしたほとんどすべての情報を提供するものだった。これらおよびその他のコンピューター・グラフィックスは、読者が複雑なトピックを視覚化する助けとなった。スリーマイル・アイランド事故の報道においても、チェルノブイリ事故の報道においても見られなかったレベルでの説明を提供するものだった。

従来型の報道でも、ニューヨーク・タイムズは、最高だった。そのウェブ・サイトにおいて、「フクシマ」で2011311日から626日の期間について検索すると、440件の記事が出てくる。「フクシマand放射線」で検索すると258件の記事が出てくる。記事の多さと継続的な報道のため、システマティックな内容分析はできないが、ニューヨーク・タイムズのアーカイブズで、放射線に関する内容のもっとも多い記事について2011626日に検索した結果出てきた最初の10件は、子供の放射線被曝についての親の不安、労働者被曝、福島発電所内および近辺の放射線レベルに焦点を当てるものだった。放射能放出量がそれまでの報告の2倍だったとする66日の発表のような新展開のニュースに関する記事は、しばしば、エネルギー・科学・健康担当の記者らの解説記事を伴った。これらの記者は、放射線関連ニュースの背景を説明する記事を書いた。低線量の放射線の継続的で長期的な被曝の影響に関して続いている科学的論争 (Wald, 2011)、放射線の危険の程度(Broad, 2011a)、そして、放射性物質が大気中を動き、沈着し、特定の食物に取り込まれていく流れ(Broad, 2011b)などを探ったものである。さらに、健康への影響に関する背景記事が数本あった。そのうちの2本は、放射性物質の計測方法と人体の細胞への影響に関する情報を含んでいた(Grady, 2011a, Grady, 2011b)。放射線に関する情報を提供する他の記事には、日本その他の国々での放射能拡散の可能性、変化する避難地帯とホット・スポット、食料品の汚染、海と海洋生物の汚染についての懸念、放射性降下物について人々が持つ心理的恐怖などを扱ったものがあった。

テレビに映ったフクシマ

多くの人々が、フクシマの事態が展開するのをテレビで観たり、ウェブやユーチューブでニュース番組のビデオを観たりした。事故発生後の最初の数日間、多くのフクシマ報道が米国の全国放送のニュース番組であった。地震・津波の被害、死者、復興の取り組みなどについての報道の影を薄くすることがしばしばだった。[テレビ報道を比較している]ティンドール・リポートによると、原子力事故についての報道を含んだABCCBS、NBCの夜のニュース番組が29件あった(2011)。これらのネットワークは、318日まで事故について毎晩報道した。その後、リビアの戦闘のような他のニュース・トピックが優先されるようになり、フクシマ報道は、影を潜めて行った。三大ネットワークは、328日に再び原子力事故について報じた。強い放射能を帯びた水の漏れが登場した時である。しかし、その後は、628日現在まで、「NBC夜のニュース」は、フクシマの事態を7回報じた。CBSは、3回、ABC1回だった。三大ネットワークはどこも、コンピューター・グラフィックスや、ビデオ、専門家などを活用してフクシマの放射線問題について説明を試みたが、これらの報道は、しばしば、ニュース番組で要求される短さのため、簡略なものだった。

CNNは、24時間ニュース・チャンネルとして、ネットワークのニュース番組よりも、解説やグラフィックスを提供するための時間がずっと多かったのだが、それにもかかわらず、初期の報道においては、一連の番組で同じシーンのビデオをエンドレスに繰り返し使い続けた。放送時間を同じシーンで費やしてしまうというのは、アンカーや、記者、コメンテーターが準備不足である場合が多かった。ハリウッド・リポーター(2011)のテレビ評論責任者ティム・グッドマンは、CNNのアンダーソン・クーパーもサンジェイ・ グプタ医師も、日本からの報道の際に、何をしていいか分からないという風だったとコメントしている。彼はまた、無関係なインタビューについても批判している。例えば、ピエール・モーガンが、ヨーコ・オノに、日本の「殺戮状態」をみてどう感じたかについてインタビューしたようなケースである。

CNNのコメンテーターの中には、準備できていなかった者や、誇張だらけの者もいた。例えば、[『ビル・ナイ・ザ・サイエンス・ガイ』ディズニーの教育番組で有名だった]「科学屋」ビル・ナイは、セシウム137に関する質問に間違った答えをしている(Grossman, 2011)7。 理論物理学者でおなじみのコメンテーター、ミチオ・カクは、フクシマを「カチカチと時を刻む時限爆弾」と呼ぶなど、しばしば、誇張された表現を使った(2011)。これらの欠陥があったにも関わらず、CNNは、原子力事故について他のケーブル・ネットワークより良い報道をしたとグッドマンは結論づけている。

しかし、彼は、米国のテレビ報道を次のように述べて厳しく批判した。「『メルトダウン』、『大惨事』、『放射線』などの言葉が、あたかもその事態の発生を報道機関が望んでいるかのように思わせる形で、弄ばれた」――視聴率を上げるために((2011: F-1)。彼は、記者やアンカーはもっと準備を整えておかなければならないとすると同時に、ひっきりなしの単純な質問や留まるところを知らない憶測などを止めるよう訴えた。彼は、フクシマに関する良質の情報を求めている米国人の最善のオプションとして、NHKワールド・イングリッシュやBBC、アルジャジーラ・イングリッシュのビデオを観ることを勧めた。

間違いや誇張は、印刷およびオンライン・メディアの報道にもあった。日本の外務省は、外国メディアの「過剰」報道を激しく非難し、もっと客観的になるよう求めた(Matsumura, 2011)。ニューヨーク・タイムズのマシュー・ウォルドは、一部のテレビやオンラインの報道について、時に、単純化しすぎていたり、間違っていたりすると批判し、その理由は一つには、関係している記者達にとって、原子力災害の技術的な面が難しすぎて理解できないことにあると述べている(Leahy, 2011)。他にも、とりわけ、科学者や技術的知識を持つ者の中には、伝統的メディアとソーシャル・メディアの報道をともに批判した者もあった。恐怖を煽るやり方が、またしても、メディアの波に乗り、人々の原子力恐怖症を高めたとの批判だった。

結論

大規模な原子力事故の放射線関連報道は、「救いようのない」と言われたスリーマイル・アイランド事故の頃から、発展してきた。チェルノブイリ事故の際には、幾分改善され、放射線についての報道が多くなった。ただし、これは、一般的で、具体的な放射線レベルについては情報を提供するものではなかった。フクシマにおける放射線関連報道は、もっとずっと広範で、多くの場合、ずっと良かった。解説や背景情報に置かれた力点や、多くの報道機関の視覚的能力、コンピューター・グラフィックス能力のためである。

しかし、インターネットにおける「フクシマ情報爆発」の大きさ、そして、世界中の読者や視聴者への伝達の速さは、伝統的なジャーナリストにとって問題を提起した。ジャーナリストにとって、起きている事象について理解し、説明するために専門情報源を探すのは、以前の事故の際のように難しくはなかったが、フクシマでは、「問題は専門情報源を確保することではなく、専門情報源を精査することだった」というのは、ピーター・サンドマン(2011)である。リスク・コミュニケーション・コンサルタントで、「スリーマイル・アイランド公衆の情報を得る権利に関するタスク・フォース」のメンバーだった彼の意見では、オンラインの専門知識の洪水をどれほど賢明に、取捨選択して使ったかが、すばらしい報道と型どおりの報道の主な違いとなった。

専門情報源を精査するのは、特定の分野で長期の経験を持つ専門記者にとっては、それほど難しくない。その分野が高度に技術的な場合には、経験が特に重要となる。原子力のように論争のあるトピックの場合、賛否両論のバランスをとり、また、誰なら情報について知識に基づくと同時に客観的な解釈を提供してくれるかを知っているというのは、ベテラン専門記者ならではの能力である。残念ながら、米国の新聞に対するインターネットの影響の一つは、新聞社が縮小傾向にあり、その結果、科学、環境、健康などの分野の専門記者の多くに対し、契約解除(補償金の支払いを伴う)や、レイオフなどの措置を講じているということである。これらの記者の一部は、オンライン出版の仕事をしたり、独立のブロッグ記事を書いたりしているが、彼らの経験は、もう、新聞報道の質の向上には役立っていない。科学、技術、健康の問題について適切な報道をするには、とりわけ、日本の原子力災害のようなスケールの場合には、専門記者の知識と経験が大いに必要となる。そして、それは、新聞だけではなくテレビについても言える。オンライン報道の機会が拡大しているからである。

このような問題があるものの、インターネットは、利点ももたらしている。今日、1979年や1986年とは異なるメディアの世界が存在している。フクシマのような事件は、世界中の何百万もの人々の関心を集める。そして、インターネットは、これらの人々に、ジャーナリストとの間での議論、あるいは自分たちの間で議論に参加する能力、そして、これらの事件について情報を自ら提供する能力を与える。これは、ジャーナリズムにおいて呼ばれているように「新しいメディア」である。活発な市民の参加とニュースの選択を伴うものである。新しいメディアという観点からすると、フクシマは、世界的な情報および関心の大々的な表出のため、象徴的存在となった。そして、伝統的メディアおよびソーシャル・メディアにおけるフクシマ報道は、一つのスタンダードとなり、将来の報道、とりわけ、放射線に関する報道がこれとの比較で考量されることになるだろう。

 

謝辞

本稿は、福島第一原子力発電所で20113月に発生した原子力災害に関する特集の一部である。特集の編集および翻訳は、Rockefeller Financial Servicesからの助成金によって可能となった。

翻訳 田窪雅文

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1 グーグルやグーグル・ニュースの検索結果数は、同じ用語を使った場合でも日によって違う。これらの数は、これらのトピックに関して、グーグルで大きな結果数が得られるということを示すためのものであり、絶対数と見なしてはならない。これらの検索は、2011626日に行ったものである。

2 グーグル・ニュースに加えてグーグルでも検索することは、伝統的メディア以外の情報源の寄与について理解する上で重要である。

3 スリーマイル・アイランドの部分の情報のほとんどは、「スリーマイル・アイランド事故に関する大統領委員会」の「公衆の情報を得る権利に関するタスク・フォース報告書」からの要約である。タスク・フォースの14人のメンバーは、印刷メディアと放送の両方のジャーナリスト、そして、電力会社関係と事故の起きた発電所周辺地域の市民を対照に数多くのインタビューを実施した。さらに、事故に関する政府の会合や記者会見の筆記録や公式な供述書を検証した。量・質両面での内容分析がなされた。ここで使ったタスク・フォース最終報告書は、コミュニケーションと事故とに関する様々なトピックについてタスク・フォースのメンバーが書いた他の多くの報告書の要約である。

4 「公衆の情報を得る権利に関するタスク・フォース」の量的内容分析で使われた5紙と、これらが掲載した記事の数は以下の通り:ハリスバーグ・イヴニング・ニュース、148。ニューヨーク・タイムズ、85。フィラデルフィア・インクワイアラー、61。ロサンジェルス・タイムズ、49。ワシントン・ポスト、45。フィラデルフィア・インクワイアラーは、ニューヨーク・タイムズより記事数が少なかったが、記事に当てたスペースは大きかった。インクワイアラーは、スリーマイル・アイランド事故報道に力を入れ、24人以上の記者を投入して調査チームを作った。そして、この事故の報道で、ピューリッツァー賞を獲得した。

5 チェルノブイリ事故内容分析に含まれている5紙と、これらの新聞が掲載した記事総数および放射線関連記事の数は以下の通り。ニューヨーク・タイムズ、13266。フィラデルフィア・インクワイアラー、11153。ワシントン・ポスト、10748。ウォール・ストリート・ジャーナル、2510。アレンタウンのモーニング・コール、197。テレビ・ネットワークのニュース放送の数と放射線の入っていた数は以下の通り。ABC149CBS159NBC148。(二つのニュース放送は、入手できず、データに入れていない。)

6 この短いリストには、フクシマについて良い報道をした米国内外の他の多くの報道機関が入っていない。メディアにおけるマスコミ報道--特定の報道機関における放射線関連報道も含む--のシステマティックな内容分析を行えば、もっと決定的な情報が得られるが、それを行うには一定の時間がかかる。将来検討すべき課題はいろいろ残っているが、これらの暫定的結果は、貴重な情報を提供している。

7 CNNでのビル・ナイの出演に関するニュースは、2011312日の出演からまもなく、ツイッターの「流行トピック」となった。多くのツイートが、またテレビで彼を見られることについての喜びを表明する一方、彼の間違いを指摘するものもあった。


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Topics: Nuclear Energy

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